けものみち

まったりと、きのむくままに。

Typerary - 文学作品をタイピング練習できるサイトを作成しています

adventar.org

本記事は、タイパー Advent Calendar 2022 の12月24日の記事となります。

前日は、おかぴらさんの 約1年tinで修行した後にすべキーやった結果wwwwwwww - 2ゲッターさんのメモ帳 が公開されています。


文学作品をタイピング練習できるサイト - Typerary

以下からサイトに飛べます。

blue-mud-0cd8a4b00.2.azurestaticapps.net

継続的に運営していくことを目指して、現在このようなタイピング練習サイトをつくっています(URLはアドカレ公開に合わせているだけで仮です)。 日本語 / 英語の両方で、毎パソに近い形態でタイピング練習ができる環境の提供を行えるように整備しています。

開発に関して

まだ開発段階で全然機能を追加できていないのですが、開発者の私が考えていることをメインに書こうと思います!

Typerary の名前の由来

Typerary は「タイプラリー」と読みます。

タイピングやタイプなどの単語を入れることを必須としていました。それらの単語が入っていれば、タイピング練習サイトであることがわかりやすいからです。 名前を考えていた当時は、和文・英文両方対応で、いわゆる実用入力(≒実際の文章を入力するように、日本語の漢字変換、BackSpace での文字消去なども込みでタイピング入力)練習するとしか設計していませんでした。 なので、「タイピング」というワードを入れるという制約はきつかったです。

その後、文学作品を取り扱うという方針が決まりました。そこから、図書館で本を探すイメージが頭に浮かんで、 Typing + Library で Typerary命名しました。

練習サイトの方針に合致していますし、音感的にもよく、覚えやすいので結構いい名前つけたんじゃないかな?と思っています。

なぜ文学作品?

練習サイトあるあるで課題文章を用意するのに多大なコストがかかるという問題点があります。 さらに長文の場合は、著作権の問題も絡んできて開発はできても課題文章が用意できないため運営が難しいことが多いです。

そこで目を付けたのが、青空文庫Project Gutenberg といったサイトです。これらのサイトでは、すでに著作権が切れているなどの理由でパブリックドメイン扱いになっている書籍を電子化したものをデータ化して公開しています。 パブリックドメインであるため、著作権の問題はクリアできています。また、そのまま生のデータを Typerary の開発データとして突っ込むことはできませんが、ある程度構造化された形式でデータが提供されていることも開発コストを下げられるのでメリットになります。

開発関連に関係しない側面についても実は考えています。

みなさんは、2022年度(令和4年度 = 平成34年度)から高等学校学習指導要領(平成30年告示)によって、高校で学ぶ国語科の内容が大きく変わったことをご存じでしょうか?私もすべては読んでいないのですが、客観的によくまとめられているのが以下のサイトだと思います。

www.sokunousokudoku.net

この学習指導要領では、「論理文学」「文学国語」「国語表現」「古典探究」の4科目が選択科目となり、今まで評論と文学を一つの科目で扱ってきた評論と文学を別々の科目で教えることになったため、学校側でどの科目を選択するかによっては文学国語を選択しないケースが出てくることが懸念されています。 本記事では、詳細については割愛しますが、私としては、文学作品を通して、登場人物の心情をくみ取ったり、文章から情景描写を描いたり、新しい言葉や表現、作者独自の世界観、時代を超えて共通する、あるいは相異なる価値観など、多くのことを学べるとてもよい機会だと考えているので、文学作品に触れる機会が学校で減ってしまうというのは残念に感じられます。また、大学入試共通テストは高校生の半分以上が受けるような大きな試験でありますし、これも「古典探究」と「論理国語」の組み合わせが選ばれやすいといわれているため、学生への影響は大きいかと思われます。

このような学習指導要領の変化に少しでも抗う意味も込めて、文学作品に絞るといった方針をとりました。

私は理系で思いっきり情報系の人間なので、この学習指導要領の変化でよく言われている「情報化社会に伴って、文章から早く正確に情報を読み取る力を育む」という方針についてはお気持ちわからなくはないのですが、情報化社会に国語科も対応していくべきなのか?と言われるとそうではないと思うんですよね...。

FoxTyping から学んだ課題

ちょうど1年前に別のタイピングゲーム(FoxTyping)をリリースしたのですが、ほかのサイトの二番煎じ感や、なんでもやってみたいという欲から目指す方向性が定まらず、1か月ほどで更新をやめてしまいました。

この経験から、文学作品 x タイピング練習(実用寄り)という方針をまずきっちり固めて方向性をぶれさせないことを第一に考えました。

次に、個人開発である以上、自分は「開発者」でもあり「運営」もやるということを考えて、設計をしっかり行いました。 設計、というのはプログラムにおけるクラスの設計を綿密に行い、将来の機能拡張に備えることがメインですが、運営をしていくにあたって、課題文の追加にどれくらいコストがかかるか、自動化できる個所はないかといった見積もりもしています。

開発しながら運営、というのは非常に大変です。社会人ともなればまともに時間が取れないのが目に見えています。きっちり開発の効率面を考えないと更新する意欲が失せて結果的に一発ネタのリリースと大して変わりないことになってしまうのでこの見積もりは大事です。

今後追加したいこと

まずは正式リリースしたら独自ドメインとって運営したいですね。 .jp とかでもいいですが、アプリなので .app とかでもいいと思っています。

次に、練習周りのインタフェースは整理したいと考えています。今は横並びで課題文と入力フォームを用意して、キーボード操作で完結するようにしていますが、制限時間や開始段落の指定など追加するとまたいろいろ変化させることにはなると思います。

また、結果のフィードバックの詳細を充実させることも考えています。現在は間違えたところを強調表示するだけにとどまっていますが、入力にかかった時間や、入力ログを要約してビジュアライズする機能など、タイピングスキルの向上につながるような良いフィードバックを提供できればと考えています。ただし、こういった指標はユーザの要望で闇雲に追加されがちなので、ある程度絞るつもりであります。

今後追加しない機能

ランキング機能はつけません。理由としては2点あります。

1点目は、ランキングの仕組みと Typerary の目指す方向性の相性が悪いからです。Typerary は文学作品を通してタイピング練習するのが目的で、タイピングのスキルで他者と競う目的は一切入っていません。 タイピングスキルを問わず、いろんな人に気軽にゆるく多くの作品に触れてほしいという思いがあるので、タイピングスキルの高い人が目立って表彰されるような仕組みを意図的に外しています。

また、命名のところで触れましたが、自分はこの練習サイトを作るにあたって「図書館」のイメージも結構大事にしています。 各々が好きなように本を探して、手に取って、自分のペースで本を読んで...といった自分の時間を大切にできる空間が図書館にはあると思っていて、それをこのサイトでは雰囲気として重視したいなと考えています。

2点目は、技術的な問題です。ランキングを導入する、ということは、ある程度客観的に測定できる定量的な指標を設けて、一定のルールに則って他者と自分の能力を評価する仕組みが整っているということであると考えています。Typerary では、いわゆる実用入力の練習方式を取り入れていますが、ローマ字入力やかな入力といった入力方式の違い、和文であれば IME の予測変換の使用の有無といった、ウェブアプリ側で制御できない項目が多々あるため、スコアといった指標を設けても、個人の環境の違いでランキングの正当性を担保できないことや、そのような基準や正当性を確保するコストに対してリターンが見合いません。チーターの存在を排除する仕組みを整えるとなるとさらにコストがかさむうえにいたちごっこになるのが見えていて、本当に作るべき機能の開発や、課題文章更新といったコンテンツのアップデートにきちんと工数を割けなくなるのも問題です。

主にこの2つの理由で入れていませんが、もっと言ってしまうと、ランキングを用意しているサイトなんてすでにたくさん存在するし、そのような営みはすでに毎パソなどが果たしてくださっていると思っているので、つけたところで差別化は図れないといったことも考えていました。

ユーザごとに練習結果を保存する機能については、どれくらい需要があるのか、それに伴ってどれくらいサーバをスケーリングするのか、あるいはクライアント側で完結させるのかといった設計が難しいため、今のところは考えていないです。

おわりに

ひとまずアルファ版のリリースをしてみました。今後はバグの修正や機能拡張、課題文追加のための支援ツールなどを作成しつつ、安定した運営ができるように土台を作っていく方針です。

本職はエンジニアですが、ウェブ開発とは関係がほとんどないため、完全趣味で手探り状態なのですが、コツコツ開発を進めていきたいと考えています。 これをきっかけに、長文・実用入力に興味持ってくれる方や、文学作品へ関心を寄せてくださる方が増えるといいな...!