けものみち

まったりと、きのむくままに。

「趣味はキーボードの早打ち、タイピングなんですけど」

この記事は「タイパー Advent Calendar 2021」の2日目の記事になります。

adventar.org

ツイッターで見てます、タイピングめっちゃ速いですよね」

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タイピング復帰した2019年以降、着実に練習を積み重ねて実力をつけ、練習サイトでも結果を残してきました。 その結果、少しずつ自分の存在が注目され始めて、古参のタイパーの方とも交流することが多くなりました。

これまで、タイパー同士の交流が薄かったため、タイピング界隈にこんなに強い人がたくさんいたことを知ることができて自分にとってはとても嬉しいことでした。

また、一部のツイッターフォロワーの方を見ると、「わたしもタイピング頑張ってみようかな」と新しくタイピングをゼロからスタートしてくださった方もいたり、 タイパー界隈以外の方もちょっと久しぶりにタイピングしてみよう、といった風に、自分を起点としていい影響を与えることができているように思います。 オンラインではなく、オフラインで初めて会った方にも「タイピングめっちゃ速いですよね」と言われることもあったくらいには、自分のイメージの中にタイピングという存在が芽吹いているようです。

わたしは、昨年の2020年アドベントカレンダー

世の中の人が少しでも「タイピング楽しいじゃん」と思ってくれる人であふれるように、わたしたちが積極的に発信していけるようにすることが、タイピング界隈の将来を明るくするものだと筆者は感じます。

と書いていたのですが、学業、研究、アルバイト、ほかの趣味などを並行しながらも、このことは一個人としてできる範囲ではある程度成功しているのではないかと感じます。

「趣味はキーボードの早打ち、タイピングです」

タイピングの腕に関して、日本語、ローマ字に関しては(一般人からすると)かなり卓越した技術を身に着けた、という自信をもっています。

なので、2020年の秋ぐらいから始めていた就職活動でも、最初の自己紹介で

「趣味はキーボードの早打ち、タイピングです」

と言っていました。

興味を持ってくださる方だと「どれくらい速く打てるんですか?」と聞いてくださるので、「だいたい秒速15打鍵ぐらいで、一番速いと秒速20打鍵とか超えるペースで打てます」というと、驚いた表情をしてくださったこともあります。

こんな調子で、初対面の方にもタイピングの存在を少しでもアピールできるように心がけていました。

ある日のことでした。

とある方と初めてお会いした時のことでした。

全然タイパー界隈とは全く関係ない界隈の方だったので、そちらの話題で盛り上がっていました。

そこで、たまたま趣味の話題に切り替わって自分の趣味を聞かれたときに、「趣味はキーボードの早打ち、タイピングです」と、キタキタと思わんばかりの定型文でタイピングの話を切り出しました。

「へぇ~、タイピングですか、なんというか...映えない感じですねえ」

といった感じの返事がきました。食事をしていたのですが危うく食べ物を落としかけました。

映えない。

......

......

見映えしない地味な趣味だ、というのは重々承知だったはずですが、いざこんなにストレートに、初対面で言われてみると結構ショッキングだったわけです。

確かに、趣味がスポーツとか楽器演奏とか、そういうのだとイメージも付きやすいし、有名どころの趣味だとイメージも付きやすいから、華やかに見えるわけです。 オリンピックもあったし、トップアスリートが活躍している姿は、人に感動すらも与えます。

一方でタイピングは、結局「文字を入力するために必要な手段でしかない」というのがおそらく普通の人の感覚なんだなと、このときわからされたわけです。

多少、失礼だな、とは思いながらも、タイパー界隈という存在によってフィルターバブルやエコーチェンバーがかかっていた世界から、この一言で少しだけ抜け出せたような気がします。

  • 「フィルターバブル」:見たくない情報を遮断して好きな情報だけ見られるようにすること
  • 「エコーチェンバー」:似たような興味関心を持った人同士がつながった結果、似たような意見しか返ってこなくなること
  • フィルターバブルもエコーチェンバーも、どちらも思想の偏りを非難する意味でつかわれることが多い用語です

「...そんな速く打てて何になるの?」

そういえば、以前にこんなことを言われたこともありました。

速く打てて何になる...と言われると、今まで本当に純粋に「〇〇 pts だしたい!」と記録を追っていた自分が少しばかばかしく思えてきます。

ちょっと返答に詰まったのですが、幸い自分は、こういった記事を書くことや、文章を読むこともたまにあったため、「タイピングが速くなると、長い文章を打っても疲れにくくなる」「速く打てるようになると、文章を打つことより、内容を書くことに集中できるようになるし、誤字も減る」といった実用方面の話で切り抜けることができました。

実用方面の話をすると割と納得してくださる感じはありますが、正直なところ、まずそういうこと言うアナタがある程度打てなきゃそんなこといっちゃダメでしょ...とは思っているところはあります。ですが、大人な対応をするべきなのでひっそり心の中にしまっておきます。

ホームポジションってあるけど、あれって...打ちづらくない?」

一般的にホームポジションは、指をまんべんなく使うので手の負担が少なく、速度も担保できるので一つの確立されたタイピングスタイルとなっています。

タイパーの方であればご存じの方も多いかと思われますが、もちろん、これはあくまで一つのスタイルであって、小指をリストラして運指を組んでいる、ホームポジションと比べて指の使い方が特定の指に偏っている状態でトップタイパーになった人もいます。

しかし、やはり一般の方にとっては「ホームポジションが正しくて自己流じゃ実はダメなんでしょ...」と思う人がいたり、そもそも最初から自己流なのでホームポジションというものを知らなかったというように認識がばらばらであるようです。

タイピングを始めたばかりの人に最初ホームポジションの存在を教えたうえで、自分に合わなければ崩してもいいよ、と教えられるような環境が整備されていくといいと感じました。 2021年はそんな初心者の人に焦点を当てた某タイピングゲームがリリースされたのもあるので、普及に期待です。

自分は、ホームポジションの形がきれいに残っているので、あまり強くおすすめすることはできないのですが、「ホームポジションって小指とか使ったりして打ちづらくない?」って言われたときは「全然崩してもいいんだよ」と教えることにしていますし、納得感を持たせるために、タイパーの運指を集めたサイトでこんな指づかいの人もいると実際に見せることもあります。

「速く打てなければ、技術に頼ればいい」

これは競技プログラミング界隈でいわゆる「暖色コーダー」と呼ばれる実力者のとあるツイート内容を簡潔にまとめたものです。

エンジニアの方だとよくコードを書きますが、そこにはエディタによってインテリセンスという機能があります。

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例えば、Get と打ってみると、こんな感じで、予測変換機能のように何を打とうとしているかを予測して候補をしてくれます。 これはめちゃくちゃ便利で、関数名や変数の名前をいちいち覚えずに、一部分打っただけで全部補完してくれるので、非常に重宝します。わたしも使っています。

しかし、その方のツイートを吟味してみると、「タイピングなんて練習しなくても、インテリセンスのような便利な機能を使えばよい」というような内容だったので、自分は少しばかり反論をしたいわけです。

コンピュータに対して文字を入力するには基本的にキーボードを使うわけです。したがってタイピングの技術がなければまず快適に文字を打つという行為ができないわけです。

その前提があって、ある程度打てるようになったとしても、いつもエディタで入力補完をしてくれるといった都合の良い機能がついているわけではありません。 ましてや、このようなブログ記事を書く時や、ツイッターなどのSNS、Slack や Discord などのチャットではそんな都合よく自分のうちたい文章を補完してくれることなどほぼないわけです。

プログラミングのコーディングにおいて存在する便利な機能に溺れてしまったせいで、基礎的なタイピングスキルをないがしろにしてもかまわない、という発信があったことに、少し危機感を覚えてしまいました。

そういう便利な機能を使うな、と言っているのではなく、便利機能に使い慣れる→タイピングをする、では順序が逆で、タイピングができるようになる→便利機能を使ってより素早く、正確に作業がこなせるようになる、であってほしいなとわたしは主張したいです。

「趣味はキーボードの早打ち、タイピングなんですけど」

こういう感じで、客観的にタイパー界隈の外からタイピングというものを見つめなおすと新しい発見があったり、自分の意見を述べる機会があったりして面白かったかなと思います。

タイピングは映えない、といった耳の痛い話もあったせいで、「趣味はキーボードの早打ち、タイピングなんですけど」と、ちょっと言葉の最後に自信のなさや不安が現れるようになってしまいましたが、これからも少しずつタイピング関連の技術や楽しさを伝えていければいいのではないかと思います。


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